防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)がダイエットに効くって本当?効果的な飲み方や副作用を現役医師が解説

「運動や食事だけではなかなか痩せづらくなってきた、、、」「ダイエットに効くサプリないかな?」

色々調べているなかで、どうやら防風通聖散がダイエットに良いらしいと知って気になった方も多いのではないでしょうか。サプリだとイマイチ効果の信憑性もわからないし、でも漢方薬ならなんだか効きそうな気がすると期待も大きいですよね。

でも、いざ飲むとなると「ほんとに痩せるの?」「副作用はある?」「自分の体質には合うの?」と、不安も出てくるはず。

この記事では、防風通聖散のダイエット効果・効果的な飲み方・副作用について、現役痩身専門医の見解を交えながら、わかりやすくまとめました。

この記事を読めば、防風通聖散が自分に合うかどうかがきっと見えてきます。

防風通聖散とは?

防風通聖散とは

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、肥満や便秘の改善に使われる漢方薬です。

自然由来の「生薬(しょうやく)」を複数組み合わせて作られていて、体の内側から代謝や排出をサポートしてくれます。

配合されているのは、“防風”や“麻黄”など熱や老廃物を外に追い出す働きのある生薬をはじめ、以下のようなさまざまな作用をもつ生薬がバランスよく含まれています。

  • 炎症をおさえるもの
  • お通じをよくするもの
  • 余分な水分を排出するもの
  • 血流を促すもの

これらの成分がチームのように連携して働くことで、より高い効果を発揮するのが防風通聖散の特徴です。

防風通聖散の効果・効能

防風通聖散は、体にこもった熱や老廃物、水分を外に出すことで、代謝や排出の流れを整える漢方薬です。

本来は風邪の初期症状に使われていた薬ですが、その働きが体質改善にも効果的だとわかり、慢性的な便秘や内臓脂肪が気になる体質の人にも用いられるようになりました。

「肥満に効く漢方」として知られるようになったのは、以下のような不調や症状に幅広く対応できるためです。

  • 老廃物が溜まりやすく、便秘やむくみがち
  • 熱がこもってのぼせやすい
  • 内臓脂肪が多く、生活習慣病のリスクがある

つまり防風通聖散は、単に体重を減らすというより、痩せにくい体質そのものにアプローチすることが目的。「何をしても痩せにくい」「体がなんとなくだるい」と感じている人に合いやすい処方です。

防風通聖散に含まれる生薬

生薬一覧
  • 防風(ボウフウ)
  • 黄ごん(オウゴン)
  • 大黄(ダイオウ)
  • 芒硝(ボウショウ)
  • 麻黄(マオウ)
  • 石膏(セッコウ)
  • 白朮(ビャクジュツ)
  • 荊芥(ケイガイ)
  • 連翹(レンギョウ)
  • 桔梗(キキョウ)
  • 山梔子(サンシシ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 当帰(トウキ)
  • 川きゅう(センキュウ)
  • 薄荷(ハッカ)
  • 滑石(カッセキ)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 甘草(カンゾウ)

防風通聖散には、18種類もの生薬がバランスよく配合されています。

それぞれの生薬が異なる役割をもち、総合的に作用することで、より高い効果が発揮されます。

  • 防風・麻黄・荊芥・薄荷:熱や老廃物を外に出す発散作用
  • 大黄・芒硝:便通を促す
  • 黄ごん・山梔子・石膏・連翹:炎症をおさえる
  • 滑石・白朮・生姜:余分な水分を排出する(利水作用)
  • 当帰・川きゅう・芍薬:血流をよくし、冷えを改善する
  • 桔梗・甘草:呼吸器や消化器の調整に働く

これらの生薬がチームとして連携し、排出・代謝・循環の働きをトータルにサポートします。

防風通聖散はどんな症状で処方される?

防風通聖散は、東洋医学では「臓毒証体質(ぞうどくしょうたいしつ)」と呼ばれる体質に使われるケースが多いです。

この体質の特徴は以下の通り。

  • 色白〜黄白色の肌
  • 骨格がしっかりしていて、脂肪または筋肉がつきやすい
  • 内臓脂肪が多く、ぽっこりとしたお腹になりやすい
  • 便秘しやすい
  • むくみやのぼせがある

このような体質の人は、生活習慣病(高血圧・糖尿病・腎疾患など)にかかりやすい傾向があるため、防風通聖散が体の巡りを整えるサポートとして使われるのです。

見た目の肥満だけでなく、「便秘がち・体が重い・なんとなく不調が続く」といった人にも処方される場合があります。

防風通聖散のダイエット効果

防風通聖散はダイエットに効くとよく聞きますが、その効果は単なる噂ではありません。

実際に、マウスや人を対象とした研究でも体重減少・内臓脂肪の減少・基礎代謝の上昇などの結果が報告されています。ここでは防風通聖散のダイエット効果をわかりやすく解説していきます。

マウス実験で確認された脂肪減少と代謝の変化

まずは動物実験による検証結果です。

北陸大学の研究では、高脂肪食を与えて肥満状態にしたマウスを対象に、防風通聖散の有無で体重の変化を比較しました。

※縦軸が体重の変化(g)で横軸が日数になります。

その結果、防風通聖散を投与されたマウスは6日目から体重が減少

さらに、投与量が多いほど体重の減りも大きくなるという、明確な効果も見られました。

脂肪細胞の重さやCT画像からも、防風通聖散を使ったグループでは内臓脂肪が少ないことがはっきりと確認されています。

またこの研究では、防風通聖散が“痩せ遺伝子”とも呼ばれるUCP-1遺伝子の発現を増やすことも示されています。UCP-1は本来、脂肪を燃やす「褐色脂肪細胞」にしか存在しませんが、防風通聖散を投与したマウスでは、白色脂肪細胞にもUCP-1が発現

これは、白色脂肪がベージュ細胞(燃焼型の脂肪細胞)に変化している可能性があり、脂肪燃焼を促進するメカニズムとして注目されています。

参考文献:Kobayashi, S., Kawasaki, Y., Takahashi, T., Maeno, H., & Nomura, M. (2017). Mechanisms for the anti-obesity actions of bofutsushosan in high-fat diet-fed obese mice. Chinese medicine, 12(1), 1-11.

日本人女性を対象にした臨床研究でも効果を確認

動物だけでなく、人を対象とした臨床試験でも効果が示されています。

日本人女性81名を対象にした研究では、全員に食事療法と運動療法を実施。そのうえで、半数には防風通聖散(1日7.5g)を24週間にわたり投与し、もう半数には偽薬(プラセボ)を投与して比較しました。

結果は、防風通聖散を使用したグループで明らかな改善が見られました。

左:ウエスト 右:ヒップ

引用:日置智津子, 荒井勝彦, 高士将典, & 新井信. (2008). エビデンスによる漢方の再構築: メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討. 医療薬学, 34(6), 513-521.

結果まとめ
  • 体重・体脂肪率・内臓脂肪が有意に減少
  • 基礎代謝が上昇
  • ウエスト −17.3cm、ヒップ −11.4cm のサイズダウン

一般的にダイエット中は基礎代謝が落ちがちですが、防風通聖散では代謝を保ちつつ脂肪を減らす効果が期待できることがわかります。

防風通聖散は“体質によって合う・合わない”がある?

最近では、肥満遺伝子との相性によって防風通聖散の効き方が変わることも示唆されています。

韓国の研究によると、以下のような遺伝子タイプを持つ人は防風通聖散の効果が出やすいとされています。

  • GNB3-C825T
  • ADRB3-Trp64Arg

一方で、以下の遺伝子タイプでは効果が出にくい傾向も。

  • UCP2-del/ins
  • PPARγ2-Pro12Ala

日本人の多くは、何らかの肥満関連遺伝子を保有しているとされており、「なかなか痩せないのは、もしかしたら体質のせいかも…」と感じている方には、体質に合う漢方として防風通聖散を試す価値があるかもしれません。

参考文献1:Akagiri, S., Naito, Y., Ichikawa, H., Mizushima, K., Takagi, T., Handa, O., … & Yoshikawa, T. (2008). Bofutsushosan, an oriental herbal medicine, attenuates the weight gain of white adipose tissue and the increased size of adipocytes associated with the increase in their expression of uncoupling protein 1 in high-fat diet-fed male KK/Ta mice. Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 42(2), 158-166.

参考文献2:Park, J., Bose, S., Hong, S. W., Lee, D. K., Yoo, J. W., Lim, C. Y., … & Kim, H. (2014). Impact of GNB3-C825T, ADRB3-Trp64Arg, UCP2-3′ UTR 45 bp del/ins, and PPARγ-Pro12Ala polymorphisms on Bofutsushosan response in obese subjects: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Journal of medicinal food, 17(5), 558-570.

防風通聖散が痩せると言われる理由

防風通聖散がダイエットに効果的とされるのは、脂肪の燃焼・吸収の抑制・排出の促進など、複数の作用が重なって働くためです。

主な仕組みは以下の3つです。

① 脂肪を燃やす

  • 麻黄に含まれるエフェドリンが交感神経を刺激し、ノルエピネフリン(NE)の分泌を促す
  • NEは脂肪細胞にあるβ受容体に結合し、脂肪の分解と熱産生を引き起こす
  • 甘草・連翹・荊芥に含まれる成分がcAMPの分解を抑えることで、脂肪燃焼の効果が持続する

② 脂肪を吸収させない

  • 腸管での脂肪吸収を抑え、体内への取り込みを防ぐ
  • 吸収されなかった脂肪は、便とともに排出されやすくなる

③ 便を出してため込まない

  • 大黄に含まれるセンノシドAが、腸内細菌の働きで分解される過程でプロスタグランジンを生成
  • このプロスタグランジンが腸を刺激し、自然な排便を促す

これらの作用が同時に働くことで、脂肪を「分解しやすく」「ため込みにくく」「外に出しやすく」する体のサイクルが整い、痩せやすい状態へと導かれます。

防風通聖散はつい食べすぎてしまう方におすすめ

防風通聖散には、脂肪の分解や排出を助ける生薬がバランスよく含まれていて、ため込みやすくなった体の巡りを整え、太りやすくなった体質を立て直してくれます。

  • 麻黄・甘草:脂肪の分解をサポート
  • 大黄・芒硝:腸を刺激し、便秘を改善
  • 白朮・滑石:水分代謝を整え、むくみを軽減

「食べすぎて体がむくんでいる気がする」「代謝が落ちたのか、太りやすくなった気がする」

そんなときは、内臓に熱や老廃物がこもって排出のリズムが乱れているサインかもしれません。

防風通聖散は、まさにそうしたため込み体質をやさしく整えてくれる漢方です。

いつ飲む?防風通聖散の効果的な飲み方

防風通聖散の飲み方
  • 飲むタイミング:食前または空腹時に服用(朝・昼・夕の1日3回が基本)
  • 服用方法:お湯に溶かして温かいうちに飲むのがベスト
  • 飲み方の工夫:味が苦手な場合はオブラートやカプセルで服用してもOK

防風通聖散は、食前または空腹時に飲むことで吸収がよくなり、成分がしっかり働きやすくなります。基本は朝・昼・夕の1日3回。忙しい方は朝・夕の2回でも構いませんが、可能であれば3回の方が効果は安定しやすいです。

服用する際は、粉末をお湯に溶かして温かいうちに飲むのが最も効果的です。漢方は熱で体内になじみやすくなるため、冷たい水で流し込むよりも温服の方が作用が出やすいと考えられています。

ただし、防風通聖散はやや独特な味があり、飲みにくいと感じる方も少なくありません。そんな場合は、オブラートやカプセルに詰め替えて飲む方法も選択肢のひとつ。吸収率はやや落ちますが、「継続できること」の方が優先です。

防風通聖散の副作用

防風通聖散は自然由来の漢方薬ですが、体質や服用状況によって副作用が出ることもあります。

とくに以下のような症状には注意が必要です。

  • 下痢・腹痛(便通がよくなりすぎる場合)
  • 動悸・不眠(麻黄による交感神経刺激)
  • 発疹・かゆみ・湿疹(アレルギー反応)
  • むくみ・血圧上昇(甘草による偽アルドステロン症)
  • 肝機能障害(まれにAST・ALTの上昇など)

便通を促す成分が多く含まれているため、体質によっては下痢や腹痛が起こることがあります。

また、麻黄には交感神経を刺激する作用があるため、動悸や不眠などの症状が出る人もいます。

甘草に含まれる成分が原因で、血圧の上昇やむくみが見られるケースもあり、とくに長期服用には注意が必要です。

まれに肝機能値(AST・ALT)の上昇などが見られることもあるため、定期的に血液検査を受けている方は医師に相談しておくと安心です。

防風通聖散を飲まない方がいい人

防風通聖散は初めに申し上げた通り、肥満や便秘にきくお薬です。

なので逆に既に痩せ型でお腹を下しやすい人は防風通聖散は飲まないほうが良いです。

防風通聖散の禁忌としては以下のようなものが挙げられます。

  • 下痢、軟便のある人
  • 胃腸の虚弱な人
  • 食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)のある人
  • 病後の衰弱期、著しく体力の衰えている人
  • 発汗傾向の著しい人
  • 狭心症、心筋梗塞等の循環器系の障害のある人、または過去に障害があった人
  • 重い高血圧の人
  • 腎臓に重い障害のある人
  • 排尿障害のある人
  • 甲状腺機能亢進症の人
  • 妊婦中、授乳中の人

防風通聖散に含まれる成分である大黄は早産を促す可能性があるため、妊娠している方は控えましょう。

また、成分の一つである麻黄はドーピングの禁止薬物に含まれることが多いのでドーピング検査を受ける予定のある方も注意が必要です。

防風通聖散のよくある質問

Q&A

防風通聖散に関するよくある質問をまとめました。

Q:市販と病院で処方されるものに違いはある?

あります。最大の違いは成分量です。市販薬は1日あたりの有効成分量が少なく、処方薬はその約2倍の成分量が配合されています。

また、処方薬は医師が体質を見極めて必要な強さや量を判断して処方するため、効果を実感しやすく、より安全に使えるメリットもあります。

Q:防風通聖散を処方してもらうには?

医療機関での診察を受ける必要があります。

一般的には、内科・漢方外来・肥満外来などで相談が可能です。症状や体質に応じて、医師が必要と判断すれば保険適用で処方されることもあります。

当院でも防風通聖散の処方が可能です。

通院が難しい方にはオンライン診療にも対応しているため、まずは気軽にご相談ください。

Q:防風通聖散は長期間飲み続けても肝機能は問題ない?

基本的には安全性の高い漢方薬ですが、まれに肝機能障害が起こるケースも報告されています。長期間継続する場合は、定期的に血液検査を受けてチェックするのが安心です。

また、体質に合っていない状態で無理に続けると副作用のリスクも高まるため、体調や変化に注意しながら使うことが大切です。

まとめ|ダイエット漢方のご相談はファイヤークリニックへ

今回は防風通聖散について詳しく解説させていただきました。

難しい内容もあったかと思いますが最後まで読んでいただきありがとうございます。

当院では他にもたくさんのダイエット薬を処方しております。

当院でのダイエットにご興味を持っていただいた方はぜひ当院のHPもご覧ください。

ファイヤークリニック

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PROFILE

江越 正敏
江越 正敏FIRE CLINIC総院長
2017年 佐賀大学医学部 卒業
2017年 都立松沢病院 勤務
2019年 都立多摩総合医療センター 勤務
2020年 FIRE CLINIC新宿院 開院
2021年 渋谷院、銀座院開院
2023年 新宿、渋谷、銀座、名古屋の4院に展開しFIRE CLINIC総院長を務める。
2024年 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 再生医療研究室 特任研究員

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