FIRE CLINIC(ファイヤークリニック)

GLP-1の種類

皆さんは、GLP-1という薬をご存知ですか?GLP-1は、注射を打って痩身できるダイエット薬で、日本で処方されているものはアメリカから輸入されています。今回は医学論文を元にGLP-1の薬にはどのような種類と特徴があるのかをご紹介します。※少々専門的なご説明になります。

1. GLP-1薬のメカニズム

GLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、血糖値のコントロールや、食抑制効果をもたらす抗肥満薬です*1。元々は2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、現在6種類ものGLP-1がFDA(米国食品医薬品局)により承認されており、ダイエット目的としても使用されるようになりました。

GLP-1はダイエットに効果を示すのですが、血中で効果が半減する時間が早く、素早く代謝され体から排出してしまうことが課題とされていました(効果を実感できる時間が短い)*2。そのため、治療薬開発時は、血中半減期を伸ばすことができないか、すなわちGLP-1の効果を長持ちさせることができないか、ということが検討されてきました。

そこで、さまざまな企業がGLP-1の血中半減期の改善を検討し、ついにGLP-1を分解する酵素である「DPP-4 (dipeptidyl peptidase 4)」の耐性を向上させ、GLP-1受容体の活性化作用を発揮させるという戦略により「バイエッタ:Byetta」開発されました*3。さらに、研究を続けると、DPP-4の耐性を高めるためにアミノ酸配列を変更し、脂肪酸を共有結合させると、GLP-1の血漿中でのアルブミン結合が促進されるということがわかりました*4。アルブミンは、薬を運搬するはたらきを持つため、血液中でのアルブミン結合が促進されることで、GLP-1がたくさん運搬されることになります。この戦略を使用し、「ビクトーザ」、「サグセンダ」、「オゼンピック」が開発されました*5。その他にも、GLP-1の長持ち効果が研究されており、GLP-1のなかでも、種類によって有効性、安全性、使用性に大きな違いが生じています。

2010年には「ビクトーザ」と「サグセンダ」が日本で初のGLP-1受容体作動薬として認められ、その後、「トルリシティ」「リベルサス」などが登場し、日本でもGLP-1が使用可能になりました*6。しかし、ダイエット目的では保険承認されていないため、これらは保険適応外での使用になります。

2. 6つのGLP-1

2-1. バイエッタ:Byetta(有効成分:エクセナチド)

バイエッタの有効成分である「エクセナチド」は、アメリカ毒トカゲ(Gila monster)の唾液腺から見出された exendin-4 という、GLP-1 活性を有するペプチドを人工合成したものです*7。これは、GLP-1 受容体に結合して、GLP-1 活性を発揮しつつ、GLP-1分解酵素である DPP4抵抗性を示します。2005年に米国にて認可され,Byetta® として発売され、2 型糖尿病患者に対し,エクセナチド投与による検討がなされました。空腹時血糖値、食後血糖値の改善のほか、体重減少作用も認められ、糖尿病治療薬としての有用性かが確認されました*8。日本においても、経口薬による血糖コントロールが不十分な2 型糖尿病患者に対して、エクセナチドを追加投与した結果、空腹時血糖値を低下させ、血糖コントロールを改善することがわかりました。また、超肥満型の2 型糖尿病患者に対してだけでなく、BMI 25以下の 2 型糖尿病患者に対しても効果が期待できることも示唆されています。さらに、エクセナチドを 3〜3.5 年にわたり投与すると、血糖コントロールの改善、体重減少作用かが維持されるとともに、脂肪肝に関連した肝機能や脂質代謝の改善、血圧低下作用も認められ,心血管のリスクを低下させる可能性があることも明らかにされています*9

2-2. ビクトーザ:Victoza(有効成分:リラグルチド)

ビクトーザの有効成分である「リラグルチド」は、GLP-1 の 26 番目のアミノ酸リジンに、脂肪酸(ミリスチン酸)を付加し、34 番目のアミノ酸リジンをアルギニンに置換した構造を有し、組織液血中で、アルブミンと結合しやすくしたものです*10。その結果、血中半減期は 11〜13時間に延ばすことができ、1 日 1 回の皮下注射によって血中濃度を維持し、GLP-1の効果を長持ちさせることに成功しました。日本において、ダイエット目的では保険適応がないですが、糖尿病の治療薬としては保険適応されているお薬になります。

リラグルチドは、単剤または他の糖尿病治療薬との併用で、1日1回皮下注射する糖尿病治療薬として、2009年に 欧州医薬品庁(EMA)、2010年に米食品医薬品局(FDA)より承認されました*11。エクセナチドとリラグルチドを比較した試験では、リラグルチドがエクセナチドよりも血糖値の指標であるHbA1c(糖化ヘモグロビン)や、収縮期血圧、空腹時血糖値の減少において優れており(Liraglutide Effect and Action in Diabetes-6試験)、副作用も少ないことが明らかになっています*12

2-3. サグセンダ:Sexenda (有効成分:リラグルチド)

ビクトーザと同様に、GLP-1受容体作動薬治療薬として、臨床成績の報告が多いサグセンダは日本においても使用されています。成分はビクトーザと同じリラグルチドなのですが、サグセンダは、肥満症に対して主に使用されています。効果として、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌を促進するとともに、食欲増加ホルモンである「グルカゴン」の抑制や、胃に入った食べ物の排出を遅らせることで血糖改善作用を発揮する効果が報告されています*13

GLP-1は、作用持続時間によって短時間作用するものと、長時間作用するものに分類され、血糖改善に対する作用機序が異なることがわかっています*14。サグセンダは、ビクトーザと同様に長時間作用型に分類され、1日1回の皮下注射によって血中濃度を維持し(半減期13.5時間)GLP-1の効果を持続することができます。また、副作用が比較的少ないのが特徴です。

2-4. オゼンピック:Ozempic(有効成分:セマグルチド)

オゼンピックの有効成分である「セマグルチド」は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させ、GLP-1を分解するDPP-4のはたらきを受けにくくした薬剤です*15。ビクトーザやサグセンダと同様に、長時間作用型に分類されるのですが、投与されると生体内で長時間作用することができるということが特徴で、1週間に1度の注射で十分とされています。また、胃排泄遅延と食欲抑制によって、体重減少効果が期待されます。

2-5. トルリシティ:Trulicity(有効成分:デュラグルチド)

トルリシティの有効成分である「デュラグルチド」は、週1回の注射によって効果を示すだけでなく、「半減期が108時間」と長続きする特徴があります*16。デュラグルチドは、長期作用型のなかでも、特に半減期が長いことから、高齢者の糖尿病患者へのお薬としても人気を誇っています。デュラグルチドは、毎日投与する必要がなく、週1回の注射で済むことから、一人暮らしの高齢者や、高齢の糖尿病患者でも、訪問看護や往診等で週1回、注射のお手伝いができるという在宅医療における利点があります。デュラグルチドは、経口糖尿病薬に比べて血糖降下作用が強く、かつ低血糖を起こしにくく、胃腸障害や免疫原性反応も従来薬と比べて少ないため、在宅高齢者にも比較的安全に用いることができるのです。

2-6. リベルサスRybelsus(有効成分:セマグルチド)

リベルサスの有効成分である「セマグルチド」は、GLP-1受容体作動薬のなかで初めて経口薬となった薬で2020年に承認されました*17。セマグルチドの経口剤は、2型糖尿病患者に対し、食事療法および運動療法の補助として効果を示しました。また、経口薬であるリベルサスは、皮下投与である他のGLP-1類に比べ、吸収率が低く、変動が大きいのも事実ですが、注針が苦手な方でも安心して使用することができます。

セマグルチドの経口投与は、PIONEERプログラムにおける10の試験で評価されており、そのうち7つの試験では、8000人以上の2型糖尿病患者を対象に、26~78週間にわたって血糖値の有効性に関する重要なデータが得られています*18。これらの試験では、セマグルチドの経口投与による単剤療法のほか、他の抗糖尿病薬を1~2種類服用している患者を対象に、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、リラグルチド、インスリンとの比較が行われました。その結果、セマグルチドの経口投与は、HbA1c(糖化ヘモグロビン)を減少させ、HbA1cは3mg/日で0.6~0.9%、7mg/日で0.8~1.2%、14mg/日で1.0~1.4%にまで低下しました。さらに、26週後の平均体重は減少し、効果は持続しました。他の臨床試験では、心血管リスクの高い患者さんにおいて、死亡リスクを約半分に抑制することも報告されています*19

セマグルチドの投与方法ですが、セマチルグドは胃で吸収される薬であるため、食事・飲水をする前に飲む必要があります。そして飲んだ後も最低30分は飲食禁止で、身体が吸収するのを待ちましょう。2時間程度空けるのが理想です。服用し始めは胃腸障害が起きやすいため、比較的少ない量から始めてください。1日1回3mgを4週間飲み続け、そのあとは維持用量の1日1回7mgに増やします。必要に応じて1日1回最大14mgまで増量し、血糖コントロールを向上させることができます。ただし、3mgで効果が十分に感じられている場合はそのまま継続することもあります。

さいごに

このようにGLP-1には多くの種類があります。医師のカウンセリングを受けて、自分に合った種類を見つけてくださいね。ファイヤークリニックでも取り扱いがございますので、お気軽にご相談くださいませ。

参考文献

*1L.L. Baggio, D.J. Drucker Biology of incretins: GLP-1 and GIP Gastroenterology, 132 (2007), pp. 2131-2157

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