基礎化粧品ゼオスキンに含まれる有効成分トレチノインとは

最近、美容医療で人気を集めているのが「ゼオスキン化粧品」です。

ゼオスキンは、医療機関でしか購入ができないというスキンケアブランドで、芸能人の方による使用も注目されています。

今回は、ゼオスキンの人気の秘訣である、シワやシミを改善に導くメカニズムについてご紹介します。

より詳しい話は、FIRE CLINICにご来院ください。

ファイヤークリニック

1. ゼオスキン(トレチノイン)とは 

ゼオスキン(トレチノイン)とは、シワやシミを改善する効果のある化粧品で、医療機関でしか取り扱うことが許可されていません。実際に医療機関では、スキンケアプログラムなどと称し、ゼオスキンを3ヶ月から4ヶ月間使用することで、肌ターンオーバー促す「肌質改善」という目的のもと使用されています。たるみが気になってきた方、シミや肝斑をなくしたい方、肌をトーンアップさせたい方などに人気な肌質改善化粧品になります。

医療機関でしか取り扱いがないこともあり、非常に強いお薬であるため、実際に使用されている方のなかには、ダウンタイムに苦戦される方もいらっしゃいます。しかし、使用後の肌質は、毛穴もなく、ツルツルであるため、ゼオスキンは人気を誇っています。

ゼオスキンの人気の秘訣は、有効成分である「トレチノイン」による効果です。ゼオスキンの商品にはトレチノインが含まれています。トレチノインはビタミンA誘導体の一種です。ビタミンAは、皮膚細胞の細胞分化を促進し、ターンオーバーを促すため、美容効果の高い栄養素として知られています。その中でも、ビタミンA誘導体であるトレチノインには、細胞増殖を促し、皮膚の再生サイクルを促進する効果が報告されています*1 。 トレチノイン研究の歴史は長く、紫外線で劣化した肌に0.05%のトレチノインを6か月ほど使い続けた結果、シワが減り、顔がトーンアップしたことが報告されているデータや*2、24週間にわたってトレチノインを使い続けると、皮膚の厚みが増し、シミを作り出すメラニンの数が減少したデータ*3などがあり、その他にもトレチノインの確かな効果が認められ、米国食品医薬品局(FDA)に承認されています。しかし、日本では副作用の可能性が大きいことから未承認であるため、保険適応外の治療薬になっています。

2. ゼオスキン(トレチノイン)がシワやシミに効くメカニズム

では、ゼオスキン(トレチノイン)がなぜシミやシワの改善に効果があるのでしょうか。そこには、有効成分であるトレチノインが関係しています。ここでは、ゼオスキンの有効成分であるトレチノインが、シワやシミに効くメカニズムについてお伝えします。

皮膚にみられるしわは、さまざまな原因で生じます。このうち「加齢による老化」と「太陽からの紫外線(光老化)」*4が原因でできるしわを医学的にはしわと呼んでいます。

皮膚は、表面から順に、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3つの組織からなり、このうち真皮には、コラーゲンや弾性繊維というタンパク質が存在します5。コラーゲンや弾性繊維は、皮膚組織を支えるゴムのようなはたらきをしており、これらがあることで皮膚の弾力がうまれ、たるみを防止します。しかし、歳を取ると、コラーゲンや弾性繊維の量が減ることで皮膚の弾力が失われ、しわができてしまいます。さらに、年齢を重ねると、表皮に存在する角化細胞の数が減少して表皮が薄くなったり、水分が少なくなったりするために小じわが生じます6

紫外線(光老化)によるしわは、紫外線が真皮にあるコラーゲンや繊維組織の合成を妨げるだけでなく*7、紫外線によって破壊されたコラーゲンの断片が蓄積し、それが皮膚の構造をさらに破壊することが原因だと考えられています8

紫外線は、波長の長さの違いによって長い順に「UVA」、「UVB」、「UVC」の3種類に分けられます。その中でも波長の長い「UVA」は、繊維組織で活性酸素を発生させ*9、紫外線により発生した活性酸素が引き金となって、「マトリックス・メタロ・プロテアーゼ(MMPs)」という酵素がつくられ、この酵素がコラーゲンや繊維組織を切断します。活性酸素は、細胞のDNAや細胞膜も破壊するため、我々生物にとって、紫外線は有害であるのです。

そこで、トレチノインは、シワの原因になる、コラーゲンや繊維組織の減少を防ぐことが報告されています。実験結果として、0.05%のトレチノインを塗った男女の被験者は、顔や腕など、塗った箇所だけ(部分的に)皮膚が綺麗になったということが報告されています*10。さらに、トレチノインは、紫外線によってできるシワに対してだけでなく、加齢によって生じる小ジワも減らすことがわかりました*11

さらに、トレチノインは、シワだけでなく、シミへの効果も期待されています。紫外線にあたると、表皮と真皮の境界部に存在するメラニン形成細胞が生成され、ターンオーバーにより、皮膚の外に排出されます。しかし、加齢により、ターンオーバーのサイクルが遅くなったり、崩れてきたりすることで、メラニンが正常に排出されなくなります*12

その結果、メラニンは排出されず、皮膚に留まり続け、シミという茶色の色素沈着物質になって存在するのです。歳をとるということは、その分、紫外線に当たっている回数も多くなるため、必然的にシミの数も増えます。紫外線に当たっている時間は長いのに、ターンオーバーは遅いといった悪循環が生じてしまうのです。

実験結果によると、0.05%及び0.1%のトレチノインを使用した男女の被験者は、シミを作り出すメラニン生成細胞の数が減少したことがわかりました。また、トレチノインにより、上皮が丈夫なり、肌質改善効果が報告されています*13

さらに、既に皮膚が紫外線のダメージを受けている男女の被験者に対して、トレチノインを使用したところ、シワと色素沈着の両方が減少したことがわかりました*14。このように、トレチノインは、シワを作り出すコラーゲンや繊維組織に、またシミを作り出すメラニン生成細胞へアプローチすることによって、肌質改善を導くのです。

3. ゼオスキン(トレチノイン)の使用方法

 

ゼオスキンの有効成分である、トレチノインの使用方法は、0.05%トレチノインクリームまたは0.025%クリームを「豆粒大」の大きさで、毎日塗ることをおすすめされています*15

敏感肌の患者さんは、0.025%のクリームからはじめ、その際、少量のマイルドなクレンジング剤での洗顔後15~20分以内に塗布しましょう。トレチノインを使用し続けてみて、肌荒れやヒリヒリ感などがないことを確認したら、使用量を増やすことができます。

また、トレチノインの一般的な副作用である、あかぎれを最小限に抑えるためには、保湿クリームやローションを使用することをおすすめされています。保湿クリームとトレチノインを混合したクリームを作ったら良いのでは?と考える方もいらっしゃると思いますが、実は保湿剤とトレチノインを配合することは、トレチノイド活性が失われ、効果が減少してしまう可能性があるため*16、別々の塗布になります。

また、夜にトレチノインを使用した翌朝、保湿剤を使用することで、副作用を抑えることができます。もちろん、トレチノイン使用中は、日焼け止めを塗って、紫外線へ当たらないように心がけてください。

ゼオスキンは、お医者さんの指導のもと、スキンケアプログラムとして個人にあった組み合わせで処方されています。プログラムのなかには、クレンジング剤や、洗顔料、化粧水、美容液、日焼け止めの基本的なスキンケアアイテムと併用するものあります。

そのため、元々アレルギー等で、ゼオスキンに含まれるトレチノイン以外の成分の使用を避けたい方や、乾燥肌や脂性肌の方に合ったクレンジング剤や洗顔料など、お医者さんの判断のもと、個人によってゼオスキン化粧品の組み合わせが異なります。また、使用しているうちに肌の調子が悪い場合などは、肌の状態やライフスタイルに合わせてカスタマイズすることが可能になっています。

さいごに

ゼオスキンの有効成分であるトレチノインによる副作用で大変な肌荒れになり、使用を諦めたという方も数多く見られます。ターンオーバーを促す威力が大きいため、日本では認可されておらず、医師の処方のもとでのみ購入が可能になっています。

 

参考文献

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*8 Fisher GJ, Kang S, Varani J et al. Mechanisms of photoaging and chronological skin aging. Arch Dermatol 2002; 138:1462–70.

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*9 Garmyn M, Yarosh DB. The molecular and genetic effects of ultraviolet radiation exposure on skin cells. In: Photodermatology (Lim HW, Honigsman H, Hawk JLM, eds). New York: Informa Healthcare, 2006; 41–50.

https://www.taylorfrancis.com/chapters/edit/10.3109/9781420019964-4/molecular-genetic-effects-ultraviolet-radiation-exposure-skin-cells-marjan-garmyn-daniel-yarosh

*10 G D Weinstein et al.Topical tretinoin for treatment of photodamaged skin. A multicenter study,127(5):659-65.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2024983/

*11E A Olsen et al.,Tretinoin emollient cream: a new therapy for photodamaged skin, 26(1992):215-24.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1552056/

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*13

Helen Mary Torok et al.,Hydroquinone 4%, Tretinoin 0.05%, Fluocinolone Acetonide 0.01%: A Safe and Efficacious 12-Month Treatment for Melasma,2005;75:57-62

.https://www.phoeberichmd.com/docs/Hydroquinone%204%25,%20Tretinoin%200_05%25,%20Fluocinolone%20Acetonide%200_01%25%20A%20Safe%20and%20Efficacious%2012-Month%20Treatment%20for%20Melasma.pdf

*14 Grimes PE. Melasma: etiologic and therapeutic considerations. Arch Dermatol. 1995; 131:1453-1457.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7492140/

*15 Weiss JS, Ellis CN, Headington JT, Tincoff T, Hamilton TA, Voorhees JJ. Topical tretinoin improves photoaged skin: a double-blind vehicle-controlled study. JAMA 1988; 259:527-32.

https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/370378

*16 Pathak MJ. Sunscreens and their use in the preventive treatment of sunlight-induced skin damage. J Dermatol Surg Oncol 1987; 13:739-50.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1524-4725.1987.tb00544.x

*17 Reza Kafi et al., Improvement of naturally aged skin with vitamin A (retinol), 143(2007):606-12.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17515510/

 

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PROFILE

江越 正敏FIRE CLINIC総院長
2017年 佐賀大学医学部 卒業
2017年 都立松沢病院 勤務
2019年 都立多摩総合医療センター 勤務
2020年 FIRE CLINIC新宿院 開院
2021年 渋谷院、銀座院開院
2023年 新宿、渋谷、銀座、名古屋の4院に展開しFIRE CLINIC総院長を務める。